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2018年01月14日

炎628について

このブログは管理人である私の気まぐれで更新するため、はっきり言って記事の「伸び」はよろしくない。

まああまりそういった順位とかナントカを気にしないでやってはいるのだが、見るも哀れという感じのPV数の中、「炎628」の記事だけは文字通り桁違いのPV数である。ほんとに桁が違う。同じ桁に乗っている記事がないのが悔しいところである(笑)

さて、炎628は1985年のソ連の映画である。現代は英語訳すると「Come and See」、つまりは「来たりて見よ」というとこだ。ド直球訳に聞こえるかもしれないが、聖書の一節だそうである。

舞台となっている白ロシアは現在のベラルーシ共和国。東欧美人が多いことで有名な国である。1990年にソ連の崩壊に伴って独立し、ルカシェンコという大統領が独立当初から現在に至るまで独裁を行っている。

タイトルの元となった「628」という数字は、この白ロシアにおいて第二次世界大戦中にドイツ軍に焼き討ちされた村の数を示している。
独ソ戦における双方の虐殺行為は我々日本人の想像をはるかに超えている。この映画に登場するアインザッツグルッペン(らしき集団)だけでも、1943年に解散するまでに東部戦線で100万人以上を殺害したとされている
軍人・民間人を合わせての大戦の戦死者はドイツが約500~700万人、ソ連が2100~2800万人と、参加した他の国々をはるかに上回る数字だ。

ドイツ軍がユダヤ人や共産主義者、パルチザンに対して一層苛烈であったことは言うに及ばないが、民間人との区別がつかないゆえに手当たり次第に殺害していった様子は日中戦争の「便衣兵」問題とよく似ている(ちなみにだが手塚治虫氏は1983年から連載した「アドルフに告ぐ」という漫画の中で既に便衣兵という言葉を使っていた)。

ではこの映画のアインザッツグルッペンはどうなのかというと、ナチズムの狂気に酔いしれた無法者というのがやはり東欧国民の持つ印象なのだ。
よくハリウッド的な映画の敵役で出てくるチンプで意地の悪いドイツ軍人(笑)をやり玉に「本当のドイツ人は高貴!騎士道精神!ロシア人の方が野蛮!」みたいな手合いもいるのだが、翻ってこの映画で描かれている「野蛮な」ドイツ人の野蛮さは常軌を逸しているという他ないのである。

確かにドイツ軍は先進的な武器、洗練された軍服、高い戦術を使いこなし一時は欧州のすべてを手に入れた。しかし「炎628」に登場するドイツ人は見た目こそエリートの気風だが、原始人でも裸足で逃げ出すような残虐性と嗜虐性を終始観客に見せつけてくる。

東欧の人々の心に染み付いた、ヘドロのように凝固した憎しみから炎が上がっているような、そんな怨念を感じる映画である。画面からその怨念がにじみ出る様子が、実際に体感できるのだ。オカルトチックだと思うかもしれないが、自分にはそれがはっきりと見えたのである。

ドイツ軍の非道な行いはホロコーストに代表されるが、あれを学校で人種差別と教えてるところの、本当の核の部分は「自分たちは世界一優秀な民族だ」という思い込みから始まった事である。

これは世界中どの民族でも必ず抱える自然な愛国心の一つでもある。ところがそれが度を越し、人々の意思が法律に書かれ、すべての差別が合法化されるという事態に発展すること自体、歴史上何度も繰り返されていることなのだ。


かくいう日本もまったく他人ごとではない。欧米はナチスの優秀人種主義が招いた犯罪を見て、自分たちが1900年代初頭から抱いていた優生学が恐ろしい事態を招くことをはっきりと悟った。しかし1948年に優生保護法を施行した日本は1996年まで、医師の判断と自治体の許可があれば患者本人の意思に関わらず妊娠中絶や不妊手術を行えるこの法律を廃止しなかった。アウシュヴィッツの解放から50年も経っていたし、アパルトヘイトの廃止とほぼ同時期である。


ナチスドイツは自らの占領域を広げるのと同時に、これらを「自らの司法権」の域内に置き、ドイツの法律と占領政策に基づいて迫害や差別を行った。明らかに不当であるこれらの法律は、しかし「法律として明文化された」ものであり、システマティックな運用が可能であった事実にもう少し目を向けてもらいたい。
圧倒的優位にあるドイツ人の中では合法的な行為であり、支配された人種はそれを受け入れざるを得なかったわけだ。

「炎628」が訴えるのは人類が抱え続けている悪癖の告発であり、すべて人類にとってこのような悲劇は他人事ではなく、油断し慢心した心を持つ民族ほどこの毒牙にかかりやすいというメッセージなのだ。


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