2016年12月21日
野戦服概説

「ドイツ国防軍の野戦服について」
第二次世界大戦中、独特なグリーンの軍服に身を包んだドイツ軍は欧州を席巻しました。
1939年のポーランド侵攻に始まり、オランダ、ベルギー、フランス、ユーゴスラヴィア、そしてソヴィエト連邦…。
1918年の敗戦の折より再起不能と思われていたドイツは、ヒトラー率いるナチ党の有無を言わさぬ豪胆な国家主義に後押しされ、瞬く間に軍事大国としての姿を取り戻していきました。

そんなドイツ軍にはいくつかの象徴的な装備がありました。
一つにはシュタールヘルム。後頭部を防護する庇が付いた独特な形状のヘルメットです。
また一つには、行軍ブーツ。真っ黒な軍靴を揃えて更新する姿は、記録映像になんども登場します。
そしてこの「野戦服(Feldbluse)」もドイツ軍を象徴する装備の一つでした。
6年に渡った第二次世界大戦の間で使用された新生ドイツ軍の野戦服は、ワイマール共和国軍(ライヒスヴェーア)時代を経て、1936年に制定された軍服からスタートします。この頁では1935年の再軍備宣言以降に採用された野戦服を中心に解説をしていきます。
ドイツ軍の野戦服は見た目の良さと機能性を同時に盛り込んでいます。日本のみならず、第二次世界大戦で直接ドイツと戦った歴史を持つ国々にも大勢のマニアがいることはよく知られています。
一方で、開襟での着用、襟の改造、腰ポケットの改造など、野戦服を「オシャレに」着こなすという一種のブームが存在しました。これは制帽の形状や略帽の被り方などでも確認され、全体としてドイツ軍では服装に関する規定にはおおらかなところがあったようです。
ドイツ軍の野戦服は、基本的にウールで作られていました。ドイツのみならず当時の欧州の国々ではウール製の野戦服がよく見られます。
ウールは保温性や耐久性に優れ、実は抗菌・消臭作用もある素材です。
反面、水洗いに弱く、ドイツ軍では野戦服は水洗いせず、基本的には乾燥させて汚れを叩き落とすと決めていました。
いくら防臭作用があるとはいえ、長期間水洗いをしていない軍服はとても臭ったらしく、ノルマンディーでドイツ兵を捕虜にした連合軍の将兵がそのことを手記に残していたほどでした。

大戦劈頭より快進撃を続けたドイツ軍でしたが、ドイツそのものはアメリカやソ連に対して必ずしも国力が十分だったとはいいがたく、開戦の翌年には1936年以降4年ぶりとなる新型野戦服を導入、その後は毎年のようにマイナーチェンジを繰り返していくことになります。

鮮やかなグリーンだった野戦服も、、、

褐色が混ざり、土色に近くなっていきます。
最末期はフェルトグラウ44と呼ばれる茶褐色系の色へと変わってしまいました。これは不足していくウールの代わりにレーヨンを混ぜていたのが、段々その比率が上がっていき色味も変化していったというわけです。
終戦直前には1940年に廃止された礼服を回収し、手を加えて野戦服とした例もあったようです。ドイツ軍は快進撃を続ける一方で、深刻な国力の不足に当初から悩まされていたのでした。