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Posted by ミリタリーブログ at

2015年05月10日

「炎628」

これはヤバい映画です。

某戦争映画サイトさん(ほぼ名指しだな…)で二度と見たくない映画ランキングの堂々一位を飾っていたため、怖いもの見たさで借りてみましたが。


いやあ…世界平和を唱えてる人がこれ見てどう思うかですよね。

人間は賢いし、学ぶことができる。人間は進歩できる。争いがあっても、乗り越えて、手を取り合って生きていける。

申し訳ないんだけど、この映画見るとそういうのが疑わしく思えてくる。
これは持論も混ざってますが、人間ていうものは人間が思ってるほど賢くないし愚かです。

1985年のソ連映画、「炎628」です。

1940年代、ナチス・ドイツ軍によって占領された白ロシア(現在のベラルーシ)を舞台に、武装親衛隊の凶行を描いています。


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2015年05月10日

野火

1959年 市川崑監督

日本戦争映画で外せない一作がこちら、大岡昇平原作の「野火」です。


1944年のフィリピン戦線を舞台に、飢餓の中ひたすら潰走していく日本軍を描いた映画で、今年は塚本伸也監督でリメイクの公開が予定されています。




右が主役の船越英二。左はミッキー・カーチス。役作りすげえ…


この映画、主人公の田村一等兵が病身を理由に中隊を追い出されるところから始まるのですが、いざ病院に行っても「歩ける体のくせに病院に入るな」と追い返され、けっきょく中隊もお前に食わせる飯は無いと田村を突き放してしまいます。
田村は所属も無いままフィリピンの森を歩き続け、セブ島へ撤退する船団を目指すことになるのですが、極限の空腹が彼を襲います。彼のみならず、補給の断たれた日本軍は歩くミイラのような格好でみな海岸を目指してぞろぞろ歩いているわけです。

大東亜共栄圏の理想、米英撃滅、七生報国。高潔な理想も戦争の大義も、兵隊のお腹は満たしてくれません。
やがて食べるものを失った日本兵の間では人肉食(カニバリズム)が横行するようになりますが、田村は人間らしくありたいためか、これを拒否し続けます。

日本軍の人肉食については、1987年の映画「ゆきゆきて神軍」なんかが面白いです。これは奥崎謙三という元日本兵のキ○ガイみたいなおっさんを追いかけたドキュメンタリーで、この奥崎さんも見どころ多いのですが(笑)、日本軍が極限状況下で何をしていたか追及していく場面は非常に興味深いです。ネットのスレだと日本軍の美談ばっかりが持ちあげられがちですが、この映画は日本軍の汚いところをうまいこと掘り返していてなかなかに面白いです。

野火は国語の教科書なんかでも見かけます。白黒のどんよりした暗い雰囲気でいかにも陰鬱そうに見えますが、意外にも全体的なムードには軽妙さを感じました。
会話のテンポがいいんです。
もちろんイカれてしまった日本軍の描写は非常に狂気的でこれも鬼気迫るものがあります。



それにしてもこの映画で描かれている日本軍は「悲惨」の一言に尽きます。
日本の将軍や指揮官を英雄扱いして映画にすることも多いですが、現実問題として末端の兵士がどんな目に遭わされたか、もっと掘り下げてもいい気がします。
日本軍の苦労話は最近の映画だと玉砕ばっかりですが、正直玉砕の方が楽に見えるくらいこの飢餓地獄はすさまじいです。

この点、1989年の「226」なんかはあまり良い印象がありません。
最後の最後になって叛乱軍の青年将校たちにも家族があったんだよ的な回想が流れますが、彼らの掲げた昭和維新に付き合わされた末端の兵士たちは戦場に送られるや否や「死んで陛下にお詫びしろ」と言われたそうです。
叛乱軍の将兵たちは2月26日の反乱を通常の任務と思って出動していたため、この扱いには憤懣やるかたなかったことでしょう。
「226」には、彼らが昭和のご時世で天皇陛下に逆らった「賊軍」であったことと、末端で付き合わされた兵士がどんな目に遭わされたかの視点が抜け落ちていました。


日本戦争映画としての完成度は間違いなく一級品です。興味ある方はぜひ。