2019年12月31日
ドイツ警察
ドイツ軍の軍装マニアは何年かこの趣味をやってると警察=Polizeiの存在に触れる機会があるかと思います。
当時のドイツ警察は、現代日本の警察とは大きく異なる組織であり、また国防軍やSS並に複雑を極めた組織でもありました。
レプリカの売り手がまだまだ少ないこともあり、前者に比べれば日陰者のドイツ警察ですが、
その独特の魅力を紹介し、あわよくばまっとう(?)な若きドイツ軍マニアを終わりの見えない沼に引きずり落とそうというのが
今回の記事の趣旨でございます(開き直り)

当時のドイツ警察は、現代日本の警察とは大きく異なる組織であり、また国防軍やSS並に複雑を極めた組織でもありました。
レプリカの売り手がまだまだ少ないこともあり、前者に比べれば日陰者のドイツ警察ですが、
その独特の魅力を紹介し、あわよくばまっとう(?)な若きドイツ軍マニアを終わりの見えない沼に引きずり落とそうというのが
今回の記事の趣旨でございます(開き直り)

秩序警察(Ordnungs Polizei)
ドイツ警察概略
そもそもドイツ警察とは何か?というと、我々のよくイメージする「警察」というのは、当時の「Ordnungs Polizei=オルポ」がこれに当たりました。
これは「通常警察」とか「秩序警察」とか色々な訳がなされておりますが、オルポとは後述する諸警察組織を総称する意味合いが強いです。
このオルポとは別に、「保安警察(Sicherheitspolizei)」=のちの国家保安本部(RSHA)という親衛隊の影響が色濃い警察組織があります。
オルポもRSHAも親衛隊の下部組織ではあるのですが、互いの組織の性格や性質が異なるので同一視はできません。
軍装はどちらもできるのですが、ひとまずは前線や国内の諸地域でよく人目に付く方の「オルポ」を中心にお話を進めていきましょう。
【都市防護警察(Schutzpolizei das Reich)】

国家予算により設置され、警察官が司令官を務める司令部を中心に運用される都市警察です。
軍でいうところの兵科色にあたる職種カラーは蛍光グリーンで、パイピングや襟章の色などに使用されました。
また制服はポリツァイグリュン(警察グリーン)と呼ばれるやや黄色味がかった独特の緑色で、陸軍の野戦服と比べれば明らかに色味が異なります。
上着の袖先と襟は濃いブラウンの生地になっていました。
帽子はシャコー帽と呼ばれる特徴的な帽子が用いられました。式典や巡邏の際に着用したようです。
ただし状況によってはM18シュタールヘルムを装備している写真もあります。
もちろん陸軍と同様に、略帽や規格帽も存在しました。

基本的な装備品は軍とほぼ同様の形状のものを用いました。雑嚢など生地から全く違うものは別として、
多くは帝政や共和制時代のお古があてがわれており、旧型のマウザー小銃などで武装している写真も少なくありません。
都市防護警察の徽章類に関しては、警察襟章、警察肩章、警察バックルと、警察袖章が用いられました。
この袖章は大きな柏葉が鷲を囲っているデザインですが、刺繍糸の色で所属する警察組織が判断できました。

さらに都市防護警察では有事の際に出動する警察師団、警察大隊などの編成があり、
野戦服も警察に準じて明るいグリーンで染められたものが使用されました。
ドイツ警察は1936年のOrdnungspolizeiの成立より以前、ヴェルサイユ体制下のワイマール共和国時代から、
人数制限のある共和国軍から外れた「プールの」軍隊という側面があり、このように準軍事的組織としての側面を持っていたと思われます。
ドイツ映画で「ゾフィー・ショル~白薔薇の祈り~」という作品があるんですが、都市防護警察がいっぱい出てくるので、
どんな格好なのか知りたい方にはおススメです(作品としても面白いのでお勧め)。
【地方防護警察(Schutzpolizei der Gemeinden)】

国家予算で警察司令部が設置されていない一部の地方都市で、市町長が司令官(責任者)を務めるのが地方防護警察です。
職種カラーはカーマインレッドで、その他は都市防護警察とほとんど変わりません。
職務の内容自体も都市防護警察と変わらないため、2つの警察を「防護警察」とひとくくりにする向きもあるようです。
【国家地方警察(Gendamerie)】

国家地方警察は人口の少ない地方都市での治安維持を担う警察で、職種カラーはオレンジでした。
広大な地域を警備する都合上、部隊の自動車化が進んでおり、展開能力の早い組織でした。
これを踏まえて第二次大戦開戦後は多くのGendamerieが陸軍などに編入され、野戦憲兵(Feldgendamerie)として活動することになります。
陸軍での兵科色と国家地方警察の職種カラーが同じなのはこのためでもあります。
(ただし秩序警察全体からも憲兵・国防軍への転属は行われているので、野戦憲兵すべてが地方都市警察というわけではありません)
階級に関しても多数の兵卒を取り締まる都合上、野戦憲兵は基本的に陸軍では下士官となりました。
野戦憲兵になるとゴルゲットと呼ばれる首飾りを提げて目印としました。このゴルゲットは士官は着用しません。
また「Feldgendamerie」と書かれたカフタイトルも着用されたようです。
以上はだいたい街中にいる普通のお巡りさん的な人です。
この他に秩序警察には特殊な状況に特化した警察組織が存在しました。
消防警察(Feuerschutzpolizei)

戦時下のドイツでは消防庁のような独立組織ではなく、秩序警察の中に消防専門の警察がありました。
濃いネイビーの制服にローズピンクの職種カラーが特徴で、消防警察用のトサカが付いた特徴的な形状のヘルメットや、
高所作業用の安全ベルトなどを用いて消火活動にあたります。

↑左のトルソーは通常のよりかなり幅広で、大きな金具のついている高所作業用ベルトを着けています。
消火現場では警察権の行使が可能でした。また火災現場での救命活動なども彼らの仕事でした。
戦争後半に本土空襲が活発になると、消防警察や民間の消防団が大量に動員されて市街の鎮火に当たりました。
防空警察(Luftschutzpolizei)
ドイツ本土への空襲に対処する警察組織で、前身組織を経て1942年に創設。全国防空団(Reichsluftschutzbund)を配下に置き、
ドイツ全国の防空業務ならびに防空知識の啓発にあたりました。
水色の制服に青の職種カラーの徽章を用いますが、
将校の制服は詰襟の8個ボタンではなく、空軍のトゥーフロックとよく似た開襟の5個ボタンでした。
兵下士官階級では空軍のフリーガーブルゼが使用されています。
バックルも通常の警察官とは異なるデザインが使用されています。
水上防護警察(wasserschutzpolizei)

ドイツ国内の河川や湖、海岸を警備するいわゆる「沿岸警備隊」の役割を担っていました。
職種カラーはイエローで、他の警察官のようの8個ボタンの詰襟の制服ではなく、海軍様のダブルコートが制服でした。
ところがこのダブルコートが曲者です。
水上防護警察のダブルコートは、海軍の10個ボタンではなく、8個ボタンでした。
開戦後に海軍の指揮下にある海軍沿岸警察(Marinekustenpolizei)に多くが転属しました。
転属後のMKPは帽章が海軍のものに変更され、右胸にも海軍鷲章が付くようですが、左袖の警察袖章は残るようです。
なお被服も海軍のものとなったため、今度は10個ボタンのダブルコートが制服となります。
バックルは他の警察組織とデザインはおなじですが、真鍮のような金色のものを用いました。
交通警察
白い制服が特徴の交通整理等を所管する警察官です。
随時加筆します。
鉄道警察(Bahnschutzpolizei)
ドイツ国鉄(Reichsbahn)の鉄道路線の警備、ならびにサボタージュ防止のために創設されました。
職種カラーは黒で、1941年までは濃いネイビーの詰襟8個ボタンの制服、41年以降は薄いスカイブルーの制服を用います。

↑1941年までの濃紺制服
徽章からして正確には前身組織であるBahnschutzと思われますが、写真写りの色味としてはこれぐらい濃い紺色です。

↑1941年以降のやや灰色がかったスカイブルーの制服。階級章も一新されています。
ボタン数は5個となり、帝政風だったデザインが第三帝国風に変わっています。
右側は国鉄職員の制服。
上述の警察組織とは異なり、国鉄職員がパート制で勤務していました(警察学校は出ています)。
左袖に貼られる警察袖章は無く、代わりにSSと同様の鷲章が用いられ、これは終戦まで変わりませんでした。
肩章のデザインは他の警察と同じです。階級差を表すピフ(星章)の他に、フライングホイールと呼ばれる車輪に羽が生えた国鉄独自のデザインのピフもいっしょに肩章に差しました。
さらにバックルも兵下士官・将校ともフライングホイールのあしらわれたバックルで、柏葉がデザインされた警察官用バックルとは異なります。
帽章も警察式の柏葉で囲まれた鷲ではなく、陸軍に似たデザインかつフライングホイールがあしらわれた独自のものでした。
ピフやバックル、また制帽本体の一部は国鉄職員が用いているものと同じものを使用しています。
ざっとあらってみたのはいいのですが、これでもまだまだ諸警察組織の半分も紹介できていないと思います。
水上警察にはWasserLuftschutzPolizeiや、国鉄にはWasserBahnschutzpolizei、さらにLandPolizeiやシュッツマンシャフトに代表される補助警察など、
どう考えてもヨーロッパ中で嫌われ者だった当時のドイツは、常にあらゆる占領地で警察力を行使して
治安の維持を行うことが必要でした。
これらの組織、また警察大隊や警察連隊、警察装甲車部隊、警察戦車部隊などの紹介も今後できればと思います。
ドイツ警察概略
そもそもドイツ警察とは何か?というと、我々のよくイメージする「警察」というのは、当時の「Ordnungs Polizei=オルポ」がこれに当たりました。
これは「通常警察」とか「秩序警察」とか色々な訳がなされておりますが、オルポとは後述する諸警察組織を総称する意味合いが強いです。
このオルポとは別に、「保安警察(Sicherheitspolizei)」=のちの国家保安本部(RSHA)という親衛隊の影響が色濃い警察組織があります。
オルポもRSHAも親衛隊の下部組織ではあるのですが、互いの組織の性格や性質が異なるので同一視はできません。
軍装はどちらもできるのですが、ひとまずは前線や国内の諸地域でよく人目に付く方の「オルポ」を中心にお話を進めていきましょう。
【都市防護警察(Schutzpolizei das Reich)】

国家予算により設置され、警察官が司令官を務める司令部を中心に運用される都市警察です。
軍でいうところの兵科色にあたる職種カラーは蛍光グリーンで、パイピングや襟章の色などに使用されました。
また制服はポリツァイグリュン(警察グリーン)と呼ばれるやや黄色味がかった独特の緑色で、陸軍の野戦服と比べれば明らかに色味が異なります。
上着の袖先と襟は濃いブラウンの生地になっていました。
帽子はシャコー帽と呼ばれる特徴的な帽子が用いられました。式典や巡邏の際に着用したようです。
ただし状況によってはM18シュタールヘルムを装備している写真もあります。
もちろん陸軍と同様に、略帽や規格帽も存在しました。

基本的な装備品は軍とほぼ同様の形状のものを用いました。雑嚢など生地から全く違うものは別として、
多くは帝政や共和制時代のお古があてがわれており、旧型のマウザー小銃などで武装している写真も少なくありません。
都市防護警察の徽章類に関しては、警察襟章、警察肩章、警察バックルと、警察袖章が用いられました。
この袖章は大きな柏葉が鷲を囲っているデザインですが、刺繍糸の色で所属する警察組織が判断できました。

さらに都市防護警察では有事の際に出動する警察師団、警察大隊などの編成があり、
野戦服も警察に準じて明るいグリーンで染められたものが使用されました。
ドイツ警察は1936年のOrdnungspolizeiの成立より以前、ヴェルサイユ体制下のワイマール共和国時代から、
人数制限のある共和国軍から外れた「プールの」軍隊という側面があり、このように準軍事的組織としての側面を持っていたと思われます。
ドイツ映画で「ゾフィー・ショル~白薔薇の祈り~」という作品があるんですが、都市防護警察がいっぱい出てくるので、
どんな格好なのか知りたい方にはおススメです(作品としても面白いのでお勧め)。
【地方防護警察(Schutzpolizei der Gemeinden)】

国家予算で警察司令部が設置されていない一部の地方都市で、市町長が司令官(責任者)を務めるのが地方防護警察です。
職種カラーはカーマインレッドで、その他は都市防護警察とほとんど変わりません。
職務の内容自体も都市防護警察と変わらないため、2つの警察を「防護警察」とひとくくりにする向きもあるようです。
【国家地方警察(Gendamerie)】

国家地方警察は人口の少ない地方都市での治安維持を担う警察で、職種カラーはオレンジでした。
広大な地域を警備する都合上、部隊の自動車化が進んでおり、展開能力の早い組織でした。
これを踏まえて第二次大戦開戦後は多くのGendamerieが陸軍などに編入され、野戦憲兵(Feldgendamerie)として活動することになります。
陸軍での兵科色と国家地方警察の職種カラーが同じなのはこのためでもあります。
(ただし秩序警察全体からも憲兵・国防軍への転属は行われているので、野戦憲兵すべてが地方都市警察というわけではありません)
階級に関しても多数の兵卒を取り締まる都合上、野戦憲兵は基本的に陸軍では下士官となりました。
野戦憲兵になるとゴルゲットと呼ばれる首飾りを提げて目印としました。このゴルゲットは士官は着用しません。
また「Feldgendamerie」と書かれたカフタイトルも着用されたようです。
以上はだいたい街中にいる普通のお巡りさん的な人です。
この他に秩序警察には特殊な状況に特化した警察組織が存在しました。
消防警察(Feuerschutzpolizei)

戦時下のドイツでは消防庁のような独立組織ではなく、秩序警察の中に消防専門の警察がありました。
濃いネイビーの制服にローズピンクの職種カラーが特徴で、消防警察用のトサカが付いた特徴的な形状のヘルメットや、
高所作業用の安全ベルトなどを用いて消火活動にあたります。

↑左のトルソーは通常のよりかなり幅広で、大きな金具のついている高所作業用ベルトを着けています。
消火現場では警察権の行使が可能でした。また火災現場での救命活動なども彼らの仕事でした。
戦争後半に本土空襲が活発になると、消防警察や民間の消防団が大量に動員されて市街の鎮火に当たりました。
防空警察(Luftschutzpolizei)
ドイツ本土への空襲に対処する警察組織で、前身組織を経て1942年に創設。全国防空団(Reichsluftschutzbund)を配下に置き、
ドイツ全国の防空業務ならびに防空知識の啓発にあたりました。
水色の制服に青の職種カラーの徽章を用いますが、
将校の制服は詰襟の8個ボタンではなく、空軍のトゥーフロックとよく似た開襟の5個ボタンでした。
兵下士官階級では空軍のフリーガーブルゼが使用されています。
バックルも通常の警察官とは異なるデザインが使用されています。
水上防護警察(wasserschutzpolizei)

ドイツ国内の河川や湖、海岸を警備するいわゆる「沿岸警備隊」の役割を担っていました。
職種カラーはイエローで、他の警察官のようの8個ボタンの詰襟の制服ではなく、海軍様のダブルコートが制服でした。
ところがこのダブルコートが曲者です。
水上防護警察のダブルコートは、海軍の10個ボタンではなく、8個ボタンでした。
開戦後に海軍の指揮下にある海軍沿岸警察(Marinekustenpolizei)に多くが転属しました。
転属後のMKPは帽章が海軍のものに変更され、右胸にも海軍鷲章が付くようですが、左袖の警察袖章は残るようです。
なお被服も海軍のものとなったため、今度は10個ボタンのダブルコートが制服となります。
バックルは他の警察組織とデザインはおなじですが、真鍮のような金色のものを用いました。
交通警察
白い制服が特徴の交通整理等を所管する警察官です。
随時加筆します。
鉄道警察(Bahnschutzpolizei)
ドイツ国鉄(Reichsbahn)の鉄道路線の警備、ならびにサボタージュ防止のために創設されました。
職種カラーは黒で、1941年までは濃いネイビーの詰襟8個ボタンの制服、41年以降は薄いスカイブルーの制服を用います。

↑1941年までの濃紺制服
徽章からして正確には前身組織であるBahnschutzと思われますが、写真写りの色味としてはこれぐらい濃い紺色です。

↑1941年以降のやや灰色がかったスカイブルーの制服。階級章も一新されています。
ボタン数は5個となり、帝政風だったデザインが第三帝国風に変わっています。
右側は国鉄職員の制服。
上述の警察組織とは異なり、国鉄職員がパート制で勤務していました(警察学校は出ています)。
左袖に貼られる警察袖章は無く、代わりにSSと同様の鷲章が用いられ、これは終戦まで変わりませんでした。
肩章のデザインは他の警察と同じです。階級差を表すピフ(星章)の他に、フライングホイールと呼ばれる車輪に羽が生えた国鉄独自のデザインのピフもいっしょに肩章に差しました。
さらにバックルも兵下士官・将校ともフライングホイールのあしらわれたバックルで、柏葉がデザインされた警察官用バックルとは異なります。
帽章も警察式の柏葉で囲まれた鷲ではなく、陸軍に似たデザインかつフライングホイールがあしらわれた独自のものでした。
ピフやバックル、また制帽本体の一部は国鉄職員が用いているものと同じものを使用しています。
ざっとあらってみたのはいいのですが、これでもまだまだ諸警察組織の半分も紹介できていないと思います。
水上警察にはWasserLuftschutzPolizeiや、国鉄にはWasserBahnschutzpolizei、さらにLandPolizeiやシュッツマンシャフトに代表される補助警察など、
どう考えてもヨーロッパ中で嫌われ者だった当時のドイツは、常にあらゆる占領地で警察力を行使して
治安の維持を行うことが必要でした。
これらの組織、また警察大隊や警察連隊、警察装甲車部隊、警察戦車部隊などの紹介も今後できればと思います。
Posted by NEU at 17:28│Comments(0)
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